
こんな方におすすめの記事です。
特別支援学校の教育内容は学習指導要領を見ると普通学校に準じた形となっていますが、
個別に教育の計画を立てるため、教える内容はかなり柔軟に組み立てることができます。



見た感じ「この子は本当に特別支援学校の生徒?」と思うような普通学校にいそうな生徒もいる(でも実は精神的に不安定であったり、認知面で障害があったりする)し、発話がなく、数の概念も曖昧な生徒までいます。
特別支援学校の音楽の授業では次のような特性の生徒たちに音楽を教えていかなければいけません。
- 言葉の理解は難しいが、見よう見まねで演奏ができてしまう子
- それなりな話を展開するが、実はあまり授業の内容を理解していない子
- 基本中の基本がまだ理解できていない子
- 前回の授業の内容がすっかり抜けてしまっている子
- 集中力がなかなか続かない子



この記事では特別支援学校で行う音楽の授業をよりうまくいかせるために大切なことを5つ紹介します。
今回は軽度の知的障害の生徒向けの記事になります。
↓重度知的障害の生徒向けの授業のコツ・ネタはこちらからどうぞ



特別支援学校の先生だけでなく、
クラスに支援級の生徒がいる音楽の先生、小学校の音楽の先生などにも参考になる記事です。
実際の授業でのエピソードや提案も掲載していますので、
是非お読みください!
特別支援学級・学校の音楽の授業で気をつけること


気をつけることはこの5つになります!
- 最初の最初から説明をする
- 何度も繰り返す
- いくつかの活動を組み合わせる
- 本当にわかっているのか確かめる
- 実態に応じて編曲する
①最初の最初から説明をする
特別支援学校で教えていると、
「当然これはわかっているでしょう」と一般常識レベルだと思って説明を省いたことが、
実はわかっていなくて説明が必要だった、ということがよくあります。
本当によくあります。



たとえばこんなこと。
- 音の高低や大小について理解できていない
- そもそも楽譜の見方がわかっていない、見ながら演奏ができない
- 指揮や周りとの合わせ方がわからない。



これらについて当然わかっているものとして指導を進めてしまうと、
置いてきぼりを再現することになる危険性があります。
高い音ってどういう音のことを言うのか説明
↑鍵盤を演奏している時に間違えた鍵盤を押さえていたので、「もうひとつ高い音!」と言ったら、物理的に高い位置にある黒鍵を押さえた生徒がいました。



「楽譜」ってどうやって読むのか説明
また、「楽譜」と「歌詞カード」の違いがよくわかっていない生徒もいたり、
楽譜の見方についてもよくわかっていない生徒が結構います。



- 歌詞カードとは違って「音符」「5線」が載っているのが楽譜だよ
- 左上から読んでいくんだよ
と、年度はじめに楽譜を配るときには必ず確認をしておきます。
楽譜を追って読む、ということも最初うまくいかなかったりします。
5線の下に書いてある歌詞を音読して追わせたりして、どのような順序で楽譜を追っていくのか理解させる指導が必要です。
また練習番号は楽譜に必ず振っておいて



などと指示をしたりして、楽譜を読むことに慣れさせていくのも有効。
指揮にどうやったら合わせられるのか説明
指揮との合わせ方がわからない生徒もいます。
ASD(自閉症スペクトラム)の生徒で何度やっても指揮の一拍目の合図に合わせて太鼓が叩けない生徒がいました。
以下のように説明して練習してようやく「指揮に合わせて」太鼓を叩くことができたんです。



太鼓を見ずに打ってみて。(生徒打つ)
できるよね。
じゃあ先生が手をあげたら、太鼓を見ずに打てるように準備してから先生を見て。そう。
太鼓は見ないで、指揮を見ながら太鼓を叩くよ。
そのあと、先生が手をおろした時、一番下に手が来るところで音が鳴るようにしてみて。
いくよ、(おろす)ここ!
もう一回。(おろす)ここ!」
みたいな感じです。
「ここまで細かく?」と思いますよね。
でもこのくらい細かくやるんです。



↓「おと」の基本中の基本の学習ネタはこちら
【これは便利!】特別支援学校でも使える、音の学習授業ネタ「音楽のおと」
②何度もくり返す
特別支援学校・学級の授業では「繰り返し学習すること」が大事です。
特別支援の生徒たちは
- 理解することに時間がかかる
- 覚えることに時間がかかる
- 習熟に時間がかかる
ので、覚えて習熟するまでは何度も何度も同じことを学ぶ必要があります。
そうでないと、一瞬通り過ぎた風のごとく学んだことをさっぱりと忘れてしまいます。






③いくつかの活動を組み合わせる
習熟に時間のかかる特別支援学校・学級の生徒ですが、
ずっと同じ学習を行っていると飽きてきてしまいます。



同じ活動を1時間ずっとやると、さすがにどんな子も飽きるので、
1回の授業で行う活動の時間は短くして、それを何度も長期間にわたって行うようにすると、
「1活動15分✖️3で1コマ」のように、
いくつかの活動が一つの授業に詰め込まれることになるので、
テンポの良い授業運びができ、授業中に生徒が飽きることがありません。


「常時活動」という、毎回必ず行う授業ネタを用意しておくこともお勧めです。
以下の記事も参考にしてください。
【4月の音楽授業開き】まずは常時活動をつくろう!メリハリある授業のために



「一回だけのやりっぱなし」は特別支援の世界ではだめですよ!
「まとめ」や「復習」の時間を取り入れると自然と「くりかえし学習」をすることになりますのでおすすめです。
④本当にわかっているのか確かめる
特別支援学校・学級の生徒はとても素直。
本当にいい子たちがたくさんいます。
それは支援を受けてきた環境によるものなのか、または知的な障害があるゆえにひねくれるところまでいかないということなのか、よくわかりませんが…。
授業でも素直に「はいっ」と答えてくれることが多いです。



でも、その「はい」は、本当にわかってるの?ってよく思っていました。
「教師が言ったことに対して「はい」と答えるべき」
というルーティンでただ「はい」と返事をしていることが多いようにも思うんです。
普通級の生徒なら全然わからないところで「わかりましたか?」と聞かれて「はい!」とはさすがに答えないですよね。
逆に、
わかりにくかった部分でも「はい!」と元気に答える特別支援級の生徒たち…。
好きです。(笑)
ただ、授業を理解させる場合にはこれではいけません。
生徒が元気に答えてくれる「はい!」に満足せず、
本当にわかっているのか?どのくらいわかっているのか?と、テストしてみることが大事です。
例えばこのような音の高低と大小の学習では、
説明してわかったかどうか聞いて確認するのではなく、
「大きくて高い音」
「小さくて高い音」
「大きくて低い音」
「小さくて低い音」
これを実際に鳴らして聴き比べして、音の高低と大小を当てさせてみることでようやく「音の大小と高低について理解しているかどうか」がわかります。



⑤実態に応じて編曲する
特別支援学校で合唱や器楽・合奏を行う場合には編曲は必須です。
- 音程を取るのが難しいパートの音を簡単にする
- 3部合唱を2部合唱にする
- 器楽のメロディを簡単にアレンジする
- それぞれの器楽の実態に合わせたアンサンブルの編曲をする
市販の楽譜そのままに演奏させてもうまくいかないことがほとんどです。



私は大学時代作曲専攻だったので、授業で使う曲の編曲は苦ではありませんでした。
- 「時の旅人(3部合唱)」を2部へ
- 「リベルタンゴ」「カルミナ・ブラーナ」の合奏
- 「ジブリメドレー」「雨の曲メドレー」など歌いやすい歌
などの編曲をして授業で使っていました。






まとめ 特別支援学校の音楽の授業はコツを掴めば上手にできます!


- 一般常識だと思っていることが理解できていなかったりする→最初の最初から説明する
- 定着や習熟に時間がかかるし忘れやすい→何度もくり返す
- 集中が続かない、記憶力に限界がある→いくつかの活動を組み合わせる
- わかってなっくても素直だから「はい」って返事をする→理解度をテストして確かめる
- 普通の曲そのままは難しい→実態に応じた編曲をする
この辺に気をつけながら授業を行うと、
- 生徒の実態をおさえながら、
- 生徒に無理がない、わかりやすい
- 評価もしやすい
授業にすることができますよ。
↓特別支援学校にも役立つ「おと」の授業教材です。
- 「音の高さ」
- 「音の大きさ」
- 「音階」
- 「音名」
- 「和音」
- 「調」
などの意味が
ざっくり学べます!



記事で出てきた、「常時活動」については以下の記事も参考にしてください!


特別支援学校用の教材をnoteにアップしています。興味のあるものがあればご覧ください。
【楽しい!わかりやすい!】「動物の曲」鑑賞の音楽授業教材ネタ
【誰でもできる音楽授業】リズム学習フラッシュカード50問&カード作成ツール
知的重度のクラス向けの音楽の授業のコツ・ネタをアップしています!
- 知的重度クラスの音楽の授業のコツ7選
- 歌唱・鑑賞・器楽・創作の授業の進め方
- 授業の流れテンプレートスライド・指導案(Keynote、PowerPoint)
- 器楽の実践例(合奏の譜割り、練習用の提示スライド付き)
- 鑑賞の実践例(スライド付き)
で、教材準備を時短しつつ、質の高い教材で授業ができます!
↓以下からご覧ください↓
難しい授業をカンタンに!
教材をダウンロード今回は以上です!


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