こんにちは、音楽授業教材研究家のコギトです。
今日は鑑賞の授業で「曲の印象について答えさせること」について考えてみたいと思います。
鑑賞授業では曲の印象について、発言させたり、書かせたりすることが多いのではないでしょうか。
学生時代に先生から質問されたこともあるし、教員になってから書かせたこともある…
曲の印象を答えるのってかなり難しいですよね
音楽は、曲を聴いた時の感覚や印象、感情などによって価値づけされます。
音楽教育の現場ではその印象を生徒が鑑賞授業で受け取る・理解することができているのか、という確認が必要です。
そのため「この曲の印象を書いてみよう」となるわけです。
しかし、「ブラームスの交響曲の1番4楽章の印象や感想を答えてください」と言われても音楽教員である我々でもどう答えるか結構難しいのではないでしょうか。
そもそも1曲の中でも曲想が様々に移り変わっていくし、音楽が言葉で表せ切れるわけはないことははっきりしているし。
音楽を真面目に勉強している人ほどこの質問には答えにくいのかも…
鑑賞授業で多くなる、この「曲の印象に対する問いかけについて」今日は考えてみましょう。
ブログ運営者
コギト|音楽教材研究家
- 音楽教員歴18年の元音楽教員
- 教員辞めても教材研究が好きで続けている
- 元作曲専攻で鑑賞や創作の授業が得意
- ピアノはコンクール全国大会入賞レベルでピアノ動画チャンネル(YouTube)も運営
- ICTを駆使・時短マニア
- noteで自作教材をアップ、3000ダウンロードを突破!
- 音楽や音楽教育に関することをX(Twitter)でも発信中
評価をしなければいけない音楽の授業
音楽の先生だって曲の印象を言葉で表すのが難しいことくらいわかっているのだけど、生徒の音楽の学習に対して評価をしなければいけないのが辛いところ。
なにかしら生徒に質問したりして、鑑賞の授業をした時の点数化をしなければいけないわけですよね。
だから曲の印象を答えさせたり書かせたりして、生徒を評価する材料にしようとするわけです。
最終的に音楽の演奏する技術や知識について点数化することはできても、音楽性や演奏についての点数化は基本的にはできないと私は思っています。
音楽コンクールで点数にして順位をつけたり、フィギアスケートの芸術点なんていうのも基本的にはちょっと変なことだよね…
よって音楽の授業の評価も、
- 作曲家の名前を知っているか
- 演奏技術がどのくらい身についたか
ということは評価できても、
- 演奏の音楽性に点数をつける
- 鑑賞の感想文などの記入を採点する
などの音楽性の理解や成長という点については評価・点数化することは無理があると思っています。
とはいえ評価はしなければいけないので、現実的なラインで定量化できるものだけで評価はするようにしますけど…
音楽の授業に関する学習評価というものについて私は懐疑的ですし、はなからちゃんとできると思わずにやっています。
評価しなければいけない場面では「あくまで私個人の評価だから」と念押ししたりします。
問題なのはこのような場面で強引に音楽性の評価を点数化しようとしてしまうと、本来答えのない音楽の世界に答えを捏造してしまうこと。
そうすると、「ベートーヴェンの交響曲第5番の冒頭の動機は何を表現していますか」という採点のしようがないテスト問題が生まれたりします。それに対する答えはないのです。
そしてそのようなテスト問題などに接することで音楽の解釈には何かしらの正解があると誤解して生徒は本来の音楽の価値がわからなくなっていく、ということがあるのではないでしょうか。
どうやって曲の印象について質問する?
音楽聴いて何を感じるかは自由だから、聴かせるだけでいいよね〜
音楽は言葉で言い表せないからといって、ただ聴かせるだけでは鑑賞の授業が成立しません。
ここで言いたいのは、「安易に曲の印象を生徒に答えさせるのはあまり意味がない」ということであって、鑑賞授業をやるのは意味がないということではないです。
曲の印象を答えさせるのならもっと注意深くなる必要があるので、ここではそのアイデアとして2つ挙げてみました。
音の要素を根拠として答えさせる
ある曲の印象を答えさせたとして、しっかりと「なぜそう感じたのか」を鳴っている音を根拠としてセットで答えさせることが有効です。
- どの部分の
- どんな音の要素が(物理的に)
- どう感じさせたのか
を語らせることで、答えに論理性と説得力が生まれます。
曲の最後の部分で金管楽器の高い音がなったり、リズムが細かくなったりしたので、嬉しくなっていると感じました。
みたいな感じです。
「なんでそう感じたの?」というのは私もよく使う質問フレーズです。
音楽を言葉で表現は100&できないものの、言葉で整理してみようとすることは大事だと思っています。
小学校低学年では音の根拠を付けて印象を答えるというのは難しいので、先生のほうで注目させる部分を示したり、「ここで高い音があるとどんな風に感じるかなー」と噛み砕いた質問をする必要がありますね。
短い部分を切り出して質問する
ブラームスの交響曲1番の第4楽章を鑑賞教材で扱っていたとして、曲の印象について発問する場合を考えてみましょう。
冒頭と最後とではまったく意見が異なりそうですね。
例えば最初の10秒程度だけを聴かせて「この部分だけを7文字以内でタイトルをつけるとしたら?」と質問してみるとどうでしょう?
これなら結構曲の印象を答えるのにハードルが下がると思いませんか?
クイズ番組みたいにして紙に書いたり、ICT端末から付箋ツールで一斉に提出とかしても面白いかも。
- 「悲痛」
- 「沈んでいく」
- 「ショックとため息」
などの答えが挙がりそうです。先ほど説明した考えた根拠もある一部分の話しなら答えやすいですよね。
最初大きな音がしたので何かの事件でショック受けて、それに落胆してはぁ〜っていうのがその後小さくなっていく音で表されていると思う。
みたいな感じです。
またいくら音楽に答えはないと言ってもブラームスのこの曲の冒頭に「陽気な子ども」みたいな印象を答えるなら(さすがにいないと思う)それはちょっと的外れであるとわかります。
正解はないけど、なんでも良いわけでもないもんね…
クラシックの曲の場合は特に対比的な部分も多く曲想の移り変わりがあるので、曲全体についての発言は難しくなります。
一部分に話しを絞って議論するのが良いですね。
鑑賞の授業の発問は慎重に
鑑賞授業では、プリントの最後や鑑賞カードなどに「この曲を聴いた感想を自由に書きましょう」と自由筆記欄を設けることも結構多いです。
それ自体は特に否定することもないのですが、例えばそこに書いたことを評価として使うのであればもっと注意が必要です。
少なくとも「この曲の鑑賞で学んだことを具体的な音の要素をあげながらまとめましょう」くらいの質問の仕方は必要ではないでしょうか。
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