[ad1]
この記事は卒業式のBGMをピアノで生演奏する先生に向けて、
大学と大学院で作編曲を学び、
ピアノアレンジ系YouTubeチャンネルも運営しているコギト流の
BGMアレンジ技を紹介していきます!

私は毎年卒業式でピアノの生演奏やっているんですけど、いやマジで大変です、この仕事。
- 式の雰囲気に合うように曲をアレンジする必要がある
- 式の進行に合わせて時間調整して演奏する必要がある
- ハイプレッシャーな空気の中、ミスが許されない



「卒業式BGM集」みたいなCDも売られているので、それならボタン一つで簡単なのに!
とよく思っています。
↓↓以下の記事でもグチまじりで解説しております


今回は、
実際に卒業式用にアレンジしてみたこの曲で解説を進めていきます。
↓楽譜もこちらから購入できます。
ではいきます!
☆ブログオーナー「コギト」プロフィール
[icon class="far fa-check-circle fa-lg"]幼少からピアノを始め、社会人でアマチュアピアノコンクール全国大会入賞
[icon class="far fa-check-circle fa-lg"]大学・大学院(教育学部)では作曲を専攻、ピアノソナタや合唱曲も作りステージで演奏
[icon class="far fa-check-circle fa-lg"]現在は学校で音楽を教えながら音楽授業ネタや仕事効率化の方法を発信中
Twitter:こちらから
YouTube①:COGITO アレンジャーPianist(アレンジピアノ)
YouTube②:コギト(授業ネタ)
[ad1]
卒業式のBGM演奏のアレンジのきほん5つ



- メロディライン、和音、リズムの角を取って穏やかな印象にする(弾きやすくなる)
- 休符をたくさんとり、リピートできるようにする(時間調整技Ⅰ)
- 高音域ではオルゴールのように弾き、低音域では和音を響かせる(飽きさせない)
- 最後はカデンツ(終止形)で時間調整する(時間調整技Ⅱ)
- 最後は短調の曲でもメジャーコード(長和音)で終わる
①メロディライン、和音、リズムを角を取る
卒業式のBGMに採用される曲には、ポップスの曲も多いですよね。
流行りのポップスは初めて聴く人にもしっかりと印象を残すように作らなければ売れないので、メロディや和音、リズムにインパクトがある曲が多いです。
よって、そのまま弾くと悪目立ちする場合があります。



いきものがかりのSAKURAのサビです。
ポップスの曲は16分音符やタイで結ばれるシンコペーションで独特の節回しがあります。
この曲の場合はこのままでもうるさくはありませんが、試しに簡略化してみると下のような感じになります。
ちょっと物足りないかもしれませんが、このくらいが卒業式にはちょうどよいです。
左手も単音でベースだけ弾くようにすると、オルゴールみたいできれい。
(動画:0’05″の部分)
シンコペーションのような複雑なリズムを簡略化し穏やかな感じにアレンジすると、
弾きやすくもなって、ミスもなくなります。



ここはBメロの後半の部分。
歌詞が詰まっているので同じ音が16分音符で連続します。
これを「ミミミミミミ」とピアノで弾くとちょっとしつこいです。
赤丸のところだけ抜き出して以下のようにアレンジするとしっとりです。
(動画:2’08″の部分)
また、Bメロの前半も同じようなメロディですが、
(動画:1’52″の部分)
メロディを大胆にカットして、伴奏の和音演奏だけにしています。






こういう大幅なデフォルメもBGMとして雰囲気にあっていればあり、だと思います。
②休符をたくさんとり、リピートできるようにする
卒業式のBGM演奏は、式の進行に従うもの。
入退場が5分かかるなら、
もともと4分30秒の曲も5分で終わるようにしなければいけません。



決して気が抜けない演奏です。
演奏を時間調整するには、以下の方法をとりましょう。
- 曲中の区切りの部分を休符で区切ってリピートできる部分(サビなど)を決めておく
- サビの最後の1フレーズを何度か繰り返す
- 最後はカデンツのパターンを容易しておく
例えばこのサビ前の部分。原曲はこんな感じで、
Bメロが終わると、4分休符を置いてすぐにサビですが、この休符をかなり長く取ります。
↓こんな感じに。飾りの和音も入れてみたりして。
(動画:2’25″の部分)
Bメロとサビの間で一旦明確な区切りをつけて、音楽を一旦止まらせるような書法です(ゲネラルパウゼ、全休止といいます)。
映画のBGMでも効果的に使われている部分がありますね。
この全休止で区切りを色々な部分に設けることで、
曲のいろんな部分からこの部分にジャンプしてリピートがしやすくなります。



- 演奏者が休める
- 式の進行具合をちらっと確認できる
- その後の演奏について考える時間が作れる
- 単純に「間」で感動させられる
という有利な点がありますね。
ある年に演奏した後、卒業生の保護者の方から、



という感想もいただいたことがあります。
サビの前に一旦全休止し、場内がシーンとした後に感動的なサビを弾き始めると、聴いている人はホロっとくること確実。



③高音域ではオルゴールのように、低音域では和音を響かせて
卒業式のBGMは基本的に背景に徹しなければいけないので、悪目立ちは避けます。
そうすると、テンポはゆっくりめ、音は小さめ、リズムも単純なアレンジになります。



BGMはBGM、飽きるくらいの曲調の方が場に馴染むかもしれませんが、
それでもせっかく弾くのであれば、楽しんで聴いてもらいたいですよね。
「高音域」と「低音域」で、音域を使い分けてアレンジし曲を飽きさせないようにしましょう。
今回の「SAKURA」のアレンジでも、「高音域」と「低音域」を使い分けています。
イントロは高音域でアルペジオを使って、オルゴールのような雰囲気にしています。
(動画:0’20″の部分)
Aメロ前のインスト(楽器だけ)の部分は、低音域でベースと和音を響かせ、コーラスのような雰囲気にしています。
(動画:0’50″の部分)
サビの部分も同じようなアレンジです。
(動画:2’30″の部分)



この「高音域」で演奏する部分と、「低音域」で演奏する部分を繰り返してアレンジしていくと、
マンネリなアレンジを防ぐことができます。
[ad2]
④最後はカデンツ(終止形)で時間調整する
卒業式のBGM演奏では細かい時間調整が必要なことがあります。
卒業生が全員入場して座ったタイミングでちょうど曲が終わったり、
退場の後ドアがしまったタイミングで最後の和音で締めくくったりできると、



細かくタイミングを調整したい場合は、
曲の最後でカデンツ(終止形)を入れましょう。
カデンツとはこういった、曲の区切りをつけるための最後の和音の手続きのようなもの。
↑これはよくある終止形ですね。(強進行といわれてます)
曲が終わりそうな時にタイミングがよければそのまま終われば良いですが、
「あとちょっとだけ延ばしたい!」
と思うところで、
曲の最後の和音から上のようなカデンツの和音を必要に応じて足していけばいいわけです。
ただし上に挙げたファラド→シレソ→ドミソというカデンツは「教科書みたいなカデンツ(終止形)」で
ちょっと卒業式の雰囲気に合いません(強進行といって和音の流れが強すぎるからです)。



讃美歌の最後によく使われる「アーメン終始」が卒業式にはおすすめ。



ちなみにこのFの和音をFmにする方法(moll-dur)もあります。
↑Fmになることで心をグッとつかまれるような終止形になります。
もっとカデンツを引き延ばしたい場合は、1音ずつ下がっていくベースの音に和音を乗せるのもおすすめ。
↑このようなベースの下降に、
↑こんな感じで和音をつけます。最後の2小節はアーメン終止をmoll-durにして追加してみました。右手の一番上の音はあまり動かないようにするのが終止形を作るポイントです。



さらにさらにグレードアップさせると、こんな進行も可能です。
このカデンツ、いろいろパターンを覚えておくと、アーメン終止だけのように2つ和音を追加したり、8〜10くらい和音を追加して、
曲の時間調整を自在にすることができるようになります。



使えるテクニックなので、やってみてくださいね!
⑤短調の曲でも最後はメジャーコード(長和音)で終わる
④で曲の最後の終止形について説明しましたが、最後の和音は長和音(ドミソ)で終わっていました。



BGMの候補曲の中には短調の曲も少なくないと思います。
短調の曲は最後マイナーコード(短和音)で曲が終わるのですが、
最後の和音だけを長和音(メジャーコード)に変えても問題ありません。



↓「SAKURA」も短調の曲。本当はFm(ファ・ラ♭・ド)の和音で終わる調ですが、F(ファ・ラ・ド)で終わらせてみました。
(動画:5’03″の部分)
卒業式はめでたい門出の式。この「ピカルディ終止」を使うと、曲がほっとする最後になります。
別の曲ですが、松任谷由実の「春よ、来い」も短調の曲。
以下のツイートの動画で、ピカルディ終止によるカデンツが聴けますので参考にしてみてください!
「春よ、来い」の卒業式用ピアノアレンジ。
最後の部分です。
時間調整できるように終止形(カデンツ)で時間稼ぎするのがコギト流です。
良いカデンツできたので弾いてみてください☺️#卒業式#ピアノ pic.twitter.com/LrJlnTGgdj— コギト🎸音楽の教材研究家 (@COGITOmusic) February 9, 2021
[ad1]
まとめ 目立たないけど極めて美しく



おさらいすると5つのポイントは以下です。
- メロディライン、和音、リズムの角を取って穏やかな印象にする(弾きやすくなる)
- 休符をたくさんとり、リピートできるようにする(時間調整技Ⅰ)
- 高音域ではオルゴールのように弾き、低音域では和音を響かせる(飽きさせない)
- 最後はカデンツ(終止形)で時間調整する(時間調整技Ⅱ)
- 最後は短調の曲でもメジャーコード(長和音)で終わる
メロディや和音、リズムを簡略にすることや、休符を効果的に入れることは、
卒業式の雰囲気に合わせるだけでなく、
演奏者が弾きやすくなる、という利点があることもポイント。



私、今年はこのBGM演奏の仕事をお断りしようかと思っていましたが、
結局やることになり、
どうせやるなら、とアレンジの勉強がてら、楽譜に書いて記事にしています。
みなさんもアレンジを自分でしてみると、音楽自体の勉強にもなり、
今後の創作の授業や合奏の編曲のレベルアップに確実につながります!



こんな方は楽譜もありますのでよろしければお使いください↓↓
他の曲もあります↓
では今回は以上です!
コメント