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↑誇張しているとはいえ、本当にこういう感じで凄まじい形相で歌っている合唱団、ありますよねぇ…。
歌い方や、歌う時の表情や姿勢、息の吸い方などについては
教えるのに迷う音楽の先生も多いのではないでしょうか。
こんな風に指導しちゃってませんか?
- 「お腹に力入れて!」
- 「思いっきり息吸って!」
- 「常に笑顔!口角上げて!」



この3つの指導、実は間違っています!
今回の記事では、歌の指導の際についつい言ってしまいがちな「間違い指導」3選を紹介します。
この記事を書いた人
コギト
大学・大学院で音楽教育を学ぶ。4年間くらい声楽家として活躍している先生に指示して声楽も勉強しました。アレクサンダーテクニークのコーチ資格も取得し「楽な動きか方や姿勢」についての理解も深めています。
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「お腹に力を入れて!」→間違い



と指導していませんか?
歌う時にお腹に力を入れる(腹筋がある)方が良いと考える人はこのように考えていると思われます。
- お腹に力を入れると、体が安定してしっかり立てるので良い
- 腹筋を使って良い声が出せる
- しっかりした大きな声が出せる
①お腹に力を入れると、体が安定してしっかり立てるので良い?
お腹に力を入れて立ち姿勢を安定させようとすることは
「不利な体の使い方」になります。
安定して立つために必要なことは
「バランスだけで立つ」ことであり、
バランスよく立つために筋肉にあえて力を入れる必要はありません。
さらに、バランスよく立てている時は、
全体重がしっかり足の裏から床にかかっているので、
全身の不必要な力が抜けていて、バランスよく立てている時、
その姿勢こそが最も安定した姿勢となります。
体を安定させてしっかり立つために、腹筋に常に力を入れたり、特別に腹筋を鍛える必要はありません。
こちらの記事も参考までにご覧ください↓↓


②腹筋を使って良い声が出せる?



などとよく言ったりますが、
「お腹から声を出す」というのは、
単なるイメージの話であり、
実際に声は声帯が震える事で出ていることは周知の事かと思います。
声帯で音になった声が、体で共鳴していてお腹も共鳴して震え、「お腹から声が出ている」というイメージを持つ人もいるかもしれませんが、
だからと言って、「お腹に力を入れれば良い声が出る」というわけではありません。
③しっかりした大きな声が出せる?



確かに、息を強く吐くためには、腹筋の力が必要になります。
アタックの強い大きな声を出す場合は腹筋を多く使って声を出します。



実は、筋肉の瞬発的な力を使おうと思った時には、
「弛緩した状態から一気に力を入れる」ことで可能になります。
最初は弛緩した状態にさせておき、そこから力を入れる事で力が存分に生み出せるので、
最初から力が入った状態だと、瞬発的な力は出す事ができません。
大きい声を出すことに備えて、曲の間常にお腹に力を入れている必要は全くなく、
そうすることはむしろ不利で、非効率的な筋肉の使い方となります。
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「思いっきり息吸って!」→間違い
息をするタイミングを示したりするときに、



とか言ってませんか?
これもほとんどの場合は歌にとって不利になります。
「たっぷり息は吸っておけばおくほど良い」と考えがちですが、
呼吸という観点からすると、
息を吸う量がある一定の割合を超えた時、
息を吸うのにより沢山の筋力が必要になってしまいます。
長いフレーズを一息で歌わなければいけない場合などは沢山の息を吸っておく事が必要ですが、
そういう場合はそんなに多くありません。
逆に、繊細な歌い出しなどで思いっきり息を吸ってしまうと、
体に余計な力を入れることになるので、上手く歌えません。
どんな時も思いっきり息を吸うという考え方はやめましょう。



息を吸うタイミングの指導と、
「どのくらい吸うか」という指導とは、
分けて考えた方が良いと思います。



みたいに丁寧に説明するとより良いと思います。
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「常に笑顔で口角上げて!」→間違い



いつも口角を上げて笑顔で歌うのは変
私はいつも笑顔のように口角を上げて歌うことには賛成しません。
- 音楽には様々な表現があるので、どんな曲も笑顔でというのはおかしい
- はっきり言って不自然な表情になる
- 上顎を開けることをうながしてしまう
合唱コンクールのテレビ番組を見ていると、
すごい形相で歌っている子達を見かけますが、
はっきり言って痛々しいです…。
きっとその子たちの指導をしている先生が「いつも笑顔で口角を上げて」と指導してらっしゃるんだろうと想像します。
↑まさにこんな感じ。
アレクサンダーテクニーク的「口の楽な開け方」は下顎を開ける
構造上、口を開けるというのは顎関節を使って下顎が下に下がることによって可能になります。
下顎は関節によって、頭蓋骨と独立して動くことになっていますが、
上顎は頭蓋骨と同じ部分であるため、
上顎を上げるように口を開くと、頭蓋骨ごと上にのけぞらせる形になりやすいです。
そうすると、
首が緊張する
喉が開かない
ということになり、これは歌にとって不利です。
開けるのは「上顎」ではなくて、「下顎」です。
イメージをつかみやすい伝え方としては、
「あくびをするように」口を開ける
か
「開いた口が塞がらない感じでポカーンと」口を開けるようにする
と表現するとわかりやすいです。
私自身は後者の「開いた口が塞がらない」という表現の方がわかりやすかったです。
巷では「上顎を開けるようにする」方法が良いと言わていたりもする
ネットなどを調べてみると、
「下顎ではなく、上顎を開けるようにしましょう」と、
口角を上げる方法と共に紹介されているところをよく見かけます。
「上顎を開けよう」論者の方の主張は、
下顎を開けると「あごに力が入り、良い声が出せない」という主張が多いのですが、
下顎は力を入れなくても「落とす」だけで良いので
下顎を開けるためにほとんど力は必要ありません。
逆に上顎を開ける方が、頭蓋骨を後ろに反らせなければならないので、(顎というより首に)力が入りやすいです。
検証:大歌手の口の開け方
実際、世界の大歌手たちは、下顎を開けて歌っています。
↑3大テノール、パバロッティの歌唱方法。下顎をポカーンと開けるような感じです。
↑世界的バリトン歌手のフィッシャー・ディースカウの歌唱。どうでしょう?
歌い方のテクニックの一つとしては口角を上げるのはあり?
次は世界的ソプラノ歌手のディアナ・ダムラウの「夜の女王のアリア」を見てみましょう。
超難曲のこの曲の、超高音のフレーズが出てくる部分の最高音では、
ダムラウは一瞬口角を吊り上げています↓
↓こちらも夜の女王。ルチアーナ・セッラ。(音程の正確さがエグい…)
↓こちらも、最高音の部分で積極的に口角を上げていますね。
非常に高い音程を取らなければいけない時は大歌手たちは
音程を明るく取るために、必要な時だけは積極的に口角を上げて歌っている感じがあります。






常時口角を上げておくことは余計な力が入る原因にもなりますし、
見た目もよくないので止めるようにした方が良いと思いますがどうでしょうか。
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まとめ 体を楽に保つことを意識して歌う
歌唱指導の際の間違い指導3選を紹介しました。
- 「お腹に力入れて!」
- 「思いっきり息吸って!」
- 「口角上げて!」
これらは、歌唱の一部分で「必要な場合に効果を発揮する」こともありますが、
常にこうすることには意味がありません。






部分的な歌い方や体の使い方はさておき、
まずは体を楽な状態に保っておく事が必要です。
歌う時に、お腹に力を常に入れておくことは却って不利な状態になります。
限界まで息を吸えば吸うほど、余分な筋肉を使って吸うことになるので、沢山の息が必要な場合以外はするべきではありません。
口角を上げたりすることも結局は頬をずっと吊り上げることになりますし、それによって首を反らせることにもつながりますので、不利になります。









指導と言えば、「(できないことを)新たにできるようにする」という観念が強いため、ついつい何かを「つけくわえよう」とさせがちです。
今回紹介したような指導もそのような意識が働いて、
「歌唱を上手にするためにいろいろなことをつけくわえる」としてしまうのではないでしょうか。
そうではなく、歌唱を上手にするために、
「やらなくて良いことはしない」
「いらないことはやめて、歌唱だけに必要なことだけをする」
このような観点で指導できた方が良いのではないか?という今回の記事でした。
参考になれば幸いです!
今日は以上です!
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