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特別支援学級・学校の音楽の授業で気をつけること5つ(軽度知的障害の生徒向け)

新米先生

支援級の生徒の音楽の授業を受け持つことになった。特別支援の音楽の授業って普通の授業となにか違うの?気をつけることはある?

特別支援学校の教育内容は学習指導要領を見ると普通学校に準じた形となっていますが、個別に教育の計画を立てるため、教える内容はかなり柔軟に組み立てることができます。

先輩先生

特別支援学校に通ってくる生徒の実態はさまざまなのよね。

見た感じ「この子は本当に特別支援学校の生徒?」と思うような普通学校にいそうな生徒もいる(でも実は精神的に不安定であったり、認知面で障害があったりする)し、発話がなく、数の概念も曖昧な生徒さんまでいます。

特別支援学校の音楽の授業では次のような特性の生徒たちに音楽を教えていかなければいけません。

  • 言葉の理解は難しいけど演奏はできてしまう子
  • それなりに会話はできるけど実は理解が乏しい子
  • 学習経験が少なく、音楽の基礎が確率されていない子
  • 記憶が難しく、前回の授業の内容が抜けやすい子
  • 集中を持続するのが難しい子

この記事では特別支援学校で行う音楽の授業をよりうまくいかせるために大切なことを5つ紹介します。

今回は軽度の知的障害の生徒向けの記事になります。

↓重度知的障害の生徒向けの授業のコツ・ネタはこちらからどうぞ

【重度知的障害向け】特別支援学校の音楽の授業

特別支援学校の先生だけでなく、クラスに支援級の生徒がいる音楽の先生、小学校の音楽の先生などにも参考になる記事です。

実際の授業でのエピソードや提案も掲載していますので、是非お読みください!

ブログ運営者

コギト | 音楽教材研究家

  • 音楽教員歴18年の元音楽教員辞めても教材研究が好きで続ける
  • 元作曲専攻で鑑賞創作の授業が得意、ICT・時短マニア
  • ピアノはコンクール全国大会入賞レベルでピアノ動画チャンネル(YouTube)も運営
  • ICTを駆使・時短マニアnote自作教材をアップ、3000ダウンロードを突破!
  • 音楽教員のためのオンラインサークル「ムジクラブ」運営中
目次

特別支援学級・学校の音楽の授業で気をつけること

特別支援学級・特別支援学校の音楽の授業で気をつけることはこの5つになります。

  • 最初の最初から説明をする
  • 何度も繰り返す
  • いくつかの活動を組み合わせる
  • 本当にわかっているのか確かめる
  • 実態に応じて編曲する
コギト

一つずつ解説していきます!

①最初の最初から説明をする

特別支援学校で教えていると、「当然これはわかっているでしょう」と一般常識レベルだと思って説明を省いたことが、実はわかっていなくて説明が必要だった、ということがよくあります。

本当によくあります。例えば以下のようなことです。

わかってそうでわかってない
  • 音の高低や大小について理解できていない
  • 楽譜の見方がわかっていない、見ながら演奏ができない
  • 指揮や周りとの合わせ方がわからない
コギト

それってかなり初歩中の初歩、と思われるかも知れませんが、特別支援学校の高等部でもあるあるな現象です。

これらについて当然わかっているものとして指導を進めてしまうと、生徒を置いてきぼりにする危険性があります。

いか実体験を踏まえた指導例になります。

高い音ってどういう音のことを言うのか説明

↓鍵盤を演奏している時に間違えた鍵盤を押さえていたので、「もうひとつ高い音!」と言ったら、物理的に高い位置にある黒鍵を押さえた生徒がいました。

https://twitter.com/COGITOmusic/status/1292650534441082882?s=20
新米先生

微笑ましくはあるけれど、本人は大真面目なのです。

実際、音は物理的に高いということはないので、「こういう音を高い音と呼んでいるよ」と教えないとわからないんです。

コギト

普通級の子は実体験や想像力で自然にわかってしまうんですが。

「楽譜」ってどうやって読むのか説明

また、「楽譜」と「歌詞カード」の違いや、楽譜の見方がよくわかっていない生徒も結構います。

コギト

楽譜をさかさまにして授業終わるまで受けていた生徒もいて大失態でした。

  • 「音符」「5線」が載っているのが楽譜だよ
  • 楽譜は左上から読んでいくんだよ

と年度初めには確認しておきます。

新米先生

これはさすがにわかってるでしょー、っていう感覚は一回捨てなきゃね…

楽譜を追って読む、ということも最初うまくいかなかったりします

五線の下に書いてある歌詞を音読して追わせたりして、どのような順序で楽譜を追っていくのか理解させる指導が必要です。

また練習番号は楽譜に必ず振っておいて、

コギト

練習番号の3から練習するよ。3はどこ?指差して!

などと指示をしたりして、楽譜を読むことに慣れさせていくのも有効です。

LD(学習障害)の生徒の場合はどうしても楽譜を追うことができない場合があります。その生徒には別のアプローチが必要になります。

指揮にどうやったら合わせられるのか説明

指揮との合わせ方がわからない生徒もいます。

コギト

「合わせられない」ではなく「合わせ方がわからない」という生徒も多いので、指導でできるようになることも多いですよ。

ASD(自閉症スペクトラム)の生徒で何度やっても指揮の一拍目の合図に合わせて太鼓が叩けない生徒がいました。以下のように説明して練習してようやく「指揮に合わせて」太鼓を叩くことができたんです。

太鼓を見ずに打ってみて。(生徒打つ)

できるよね。

じゃあ先生が手をあげたら、太鼓を見ずに打てるように準備してから先生を見て。そう。

そのあと、先生が手をおろした時、一番下に手が来るところで音が鳴るようにしてみて。

いくよ、(おろす)ここ!

もう一回。(おろす)ここ!

「ここまで細かく?」と思いますよね。でもこのくらい細かくやってようやくできるようになりました。

新米先生

サラッと流してたら「指揮に合わせられない子」ってされてたかも…

↓音の高低と大小や楽譜についても詳しく学習できる教材
【小学校・中学校・特別支援】「おと」の学習音楽授業ネタ(鑑賞の準備に最適!)

②何度もくり返す

特別支援学校・学級の授業では「繰り返し学習すること」が大事です。

新米先生

特別支援の子たちって理解・記憶・習熟に時間がかかるものね…

理解して、覚えて、習熟するまでは何度も何度も同じことを学ぶ必要があります。そうでないと、一瞬通り過ぎた風のごとく学んだことをさっぱりと忘れてしまうこともザラです。

コギト

一つの単元を手を変え品を変え、長くやるのが有効です。

新米先生

でも飽きられないかな…

③いくつかの活動を組み合わせる

習熟に時間のかかる特別支援学校・学級の生徒ですが、ずっと同じ学習を行っていると飽きてきてしまいます

自分の場合、「今月の歌」や「曲当てクイズ」など導入の常時活動のほか、メインとなる単元も1つではなく2つくらい用意して毎回授業をしていました。

大体一つの活動が20分くらいを目安に、「それ以上やったら飽きる」と思って授業を展開します。

コギト

短時間を長期間、が合言葉。

常時活動を用意しておくことは本当におすすめで、クイズやゲーム感覚でできる活動を入れると盛り上がりますよ。

↓特別支援学校・学級でもできる音楽クイズや音楽ゲームの学習ネタ
【クイズ感覚でできる!】「動物の曲」鑑賞の音楽授業教材ネタ
【決定版!】リズム学習フラッシュカード50問(ゲーム・遊び感覚でできる!)

常時活動に以下の記事も参考にしてください。
【4月の音楽授業開き】まずは常時活動をつくろう!メリハリある授業のために

④本当にわかっているのか確かめる

特別支援学校・学級の生徒はとても素直。本当にいい子たちがたくさんいます。

授業でも素直に「はいっ」と答えてくれることが多いです。

コギト

でもそれ、本当にわかって「はいっ」って言ってる?って思うことも多いです。

「教師が言ったことに対して「はい」と答えるもの」というルーティンでただ「はい」と返事をしていることが多いようにも思うんです(通常級もしかり)。

特別支援学級・学校では中間テストや期末テストなどがないことも多いですから、理解度をチェックしておくことは重要です。

https://twitter.com/COGITOmusic/status/1410845693405696005?s=20

音の高低や大小を変えた音を実際に鳴らして聴き比べさせ、音の高低と大小を当てさせてみることでようやく「音の大小と高低について理解しているかどうか」がわかります。

音楽の先生

こういうのをやっておくと評価にもなりますね。

また理解度をチェックするためにも「前回の授業の復習」、授業の終わりには「今日の授業のまとめ」も必ず行いましょう!

コギト

「今日はどんなことを勉強しましたか?」と最後に問いかけて発言させながらトークする時間を取ります。

理解度をチェックすることもできますし、知識の定着にもつながりますね。

新米先生

「やりっぱなしはダメ」っと…

⑤実態に応じて編曲する

特別支援学校で合唱や器楽・合奏を行う場合には編曲は必須です。いかのように編曲しなければならない機会はかなりありますね。

編曲のタイミング
  • 音程を取るのが難しいパートの音を簡単にする
  • 3部合唱を2部合唱にする
  • 器楽のメロディを簡単にアレンジする
  • それぞれの器楽の実態に合わせたアンサンブルの編曲をする
新米先生

市販の楽譜はそのままに演奏させてもうまくいかないことがほとんど…

原曲の楽譜を使っても難しいし、簡単なものは逆に簡単すぎたりしますね。

自分は以下のような曲を特別支援学校で編曲しました。

  • 「時の旅人(3部合唱)」を2部へ
  • 「リベルタンゴ」「カルミナ・ブラーナ」の合奏
  • 「ジブリメドレー」「雨の曲メドレー」など歌いやすい歌

まとめ 特別支援学校の音楽の授業のコツをつかもう!

特別支援の音楽授業
  • 一般常識だと思っていることが理解できていなかったりする→最初の最初から説明する
  • 定着や習熟に時間がかかるし忘れやすい→何度もくり返す
  • 集中が続かない、記憶力に限界がある→いくつかの活動を組み合わせる
  • わかってなっくても素直だから「はい」って返事をする→理解度をテストして確かめる
  • 普通の曲そのままは難しい→実態に応じた編曲をする

特別支援学級・特別支援学校に通学している生徒の実態は本当にさまざま。毎年の音楽の授業のレベル感も都度かえていかなければ生徒の実態にあった授業をすることはできません。

コギト

今回の記事を参考にいろいろ試しながら良い授業を作って下さいね。

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コギト

知的重度クラスの授業のコツも解説しています。

↓以下からご覧ください↓

今回は以上です!

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この記事を書いた人

音楽教師歴18年の元教員。鑑賞・創作・器楽合奏授業が得意。伴奏アレンジや合唱、合奏編曲もできます。国立大学の附属学校で研究主任&教育実習など経験あり。大好きな教材づくりで全国の音楽の先生の役に立ちたい。 自分の仕事を全部音楽関係にしたいから教員をやめて独立。ピアノ歴20年以上。アマチュアコンクールで全国入賞経験あり。ピアノアレンジ楽譜も作っています。

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