「音楽の授業、つまらないよなー」
「音楽の授業ってめんどくせー、嫌い」
言われたこと、あります?
私、あります。音楽室から帰る生徒たちが話しているのを聞いてしまったんです。まあその日は落ち込みました。なかなかショックですよね。
自分の大好きな音楽なのに、それを教えてつまらないと言われるとは…
音楽の授業は教えるのが最も難しい教科の一つです。
また、生徒目線から見ても、
- 歌わされる・表現させられる
- 結局才能とか感性勝負
- 答えのないことを考えさせられる
「難易度の高いことに挑戦させられる」というイメージを持たれているのが音楽の授業。
今日は「音楽の授業が難しい・苦手」と感じる理由や、「音楽の授業がつまらない」「音楽の授業は嫌い」と思われてしまう理由について考えてみたいと思います。
どんなところに子供たちが難しさや退屈さ、嫌と感じているかを理解すれば、自分の授業を工夫して改善することができます。
つまらないと思われてしまう音楽の授業の特徴を理解できれば、逆転の発想で楽しい音楽の授業に近づくことができるはずです。
是非最後までご覧ください。
コギト | 音楽教材研究家
- 音楽教員歴18年の元音楽教員。辞めても教材研究が好きで続ける
- 元作曲専攻で鑑賞や創作の授業が得意、ICT・時短マニア
- ピアノはコンクール全国大会入賞レベルでピアノ動画チャンネル(YouTube)も運営
- ICTを駆使・時短マニアnoteで自作教材をアップ、3000ダウンロードを突破!
- 音楽教員のためのオンラインサークル「ムジクラブ」運営中
音楽の授業が難しい理由
音楽の授業が難しいと生徒が感じてしまう理由は以下考えられます。
- 間違ったらどうしよう
- 何を答えて良いのかわからない
- 楽譜を読むのがむずかしい
間違ったらどうしよう
音楽は時間芸術なので、音楽に合う音を良いタイミングで・音色で・音の大きさで・高さで出さなければいけません。そして間違うとやりなおしもききません。ここを「ハードルが高い」と感じる生徒はいるでしょう。
「間違えてもへっちゃら!」という度胸のある生徒ならいいのですが、そうでない生徒にとっては「間違えたらどうしよう」と尻込みしてしまったりします。
音楽に苦手意識を感じていて、表現に後ろ向きな子には心理的な壁をはずすような言葉かけをしてあげるのが大事です。
何を答えて良いのかわからない
音楽はカタチに残らないということも授業が難しくなる理由です。時間の経過とともに流れ去っていきます。「今の演奏はどうだったのか」と聞かれても振り返りが難しく、また「こうだった」と言葉で言い表すことが難しいのが学ぶ側にとっても教える側にとっても音楽の授業の難しいところです。
芸術には答えがありません。「フォルテという記号の意味」などの音楽の理論的なことならまだしも、「どういう演奏が良い」「何を表現している」ということについてこれが良い表現・演奏である、と断定できないがゆえに、明確なゴールが設定できないため、どうすればよいのか具体的にわからないと感じてしまう部分があります。(逆にそれを自分で見つけ出したりすることに面白さや価値があるのですが…)
先生によって言われることが全く違ったりすることもあって、さらに混乱したりもします。
このように「何を答えて良いのかわからない」生徒には、「正解がただひとつ」だと思っていることが多いです。それゆえに存在しない一つの正解を探してしまい、何を答えて良いのかわからなくなります。
楽譜を読むのがむずかしい
「楽譜が難しい」ということも、音楽を難しいと感じる理由の一つ。
楽譜を普段から親しんでいないほとんどの生徒にとっては「謎の図形と記号」のオンパレード。教える側の教員がわかっているのでサラッと流しがちなところもわかっていないことが多いです。
全く新しい言語を教えるようなつもりで丁寧に教えた方が良いかもしれませんね。
授業で創作を行う際は、「作曲する」ことすら既に難しそうなのに、「作った曲を楽譜に書く」という課題も同時に発生してしまい、生徒にとって課題過多になってしまうことが多いです。楽譜をなるべく書かなくても成立するような創作の授業を組み立てることも大事です。
音楽の授業は教える方も難しい
授業が難しいのは生徒だけではありません。教える側の教員にも同じことが言えます。
時間を相手にした音楽を教えるには、伴奏を弾いたり歌ったりしながら指導の言葉を発したりしなければならず、高度な技術と経験が要求されます。
また、演奏がカタチに残らないので、「今の演奏はこうだった」とフィードバックするのも他の教科より難しいです。
(最近はスマホやタブレットで気軽に録音をしてフィードバックがしやすくはなってきましたが‥。)
授業の目標や評価基準の設定も本当に難しい教科ということができます。
音楽の授業が嫌いと思われる理由
友達と休み時間に大声で歌ったり、カラオケに行って楽しんだりはするのに「音楽の授業は嫌い」という生徒もいます。
- 大勢の前で表現させられるのが恥ずかしい
- 何をどう表現していいのかわからない
- 楽器が難しい
- 先生がヒステリック
大勢の前で表現させられるのが恥ずかしい
「音程が取れない」「リズムがずれてしまう」こんな子にとっては音楽の授業は基本的に苦痛でしょうし、そうでなくても歌ったり演奏したりという表現活動には「恥ずかしさ」が伴います。
音楽の授業で懲らしめられる〜…
と言っている男子生徒もいました。歌はうまくいかないし、恥ずかしいし、笑われる。そりゃイヤですよね。
歌や演奏が苦手な子には配慮が必須です。
- 全員の前で一人で歌わせたりしない
- 個人練習中に個別指導する
- 歌のテストを行う場合は別室で行う
うまくいかない演奏が周囲にさらされないように配慮してあげることが必要ですね。
何をどう表現していいのかわからない
数学のようにただ一つの答えが最終的にあるわけでもない芸術は自由であるがゆえにかえって「何をどうすればいいのかわからない」ということにもなりがち。
だから芸術系の科目は評価もむずかしい…
特に創作の授業では何をどうして良いのかわからないと感じる生徒が多いです。
いきなり「旋律の続きを作曲しなさい」と言われてワケわからないまま終わった、という感想もネットに上がっていたりして、どうも課題設定がうまく設定されていなくて、生徒が創作に戸惑ってしまったということも多いようです。
創作の授業では、「どの部分をどこまで作らせるか」という最初の課題設定が大事です。また、その授業を行うまでに、音階や和音の仕組みについて学習させておくなどのレディネス(準備性)も大事です。
↓小学生用の旋律作りの授業教材
【お試し版】短い旋律づくり授業ネタ
【小学校4・5年生】5つの音でせんりつづくり
【小学校5・6年生】和音の音でせんりつづくり
そうしないと評価軸がぶれて評価がしづらくなるし…。
それによってもっと自由にやりたい音楽得意、好きな生徒が食い足りなくなってしまい「つまらない」と思ってしまうこともあります。
楽器がむずかしい
学校の音楽の授業でリコーダーでつまづいて音楽の授業が嫌だったという意見を大人になった人から聞くことが多いです。
リコーダーは今は教育楽器のイメージですが、実は演奏するのはとても難しい楽器です。
指で持って保持しながら細かく指を動かなければならず、サミングも難しいです。低い音を出すときと高い音を出す時とでは息の吹き込み方も変えなければいけないので、鍵盤ハーモニカより断然難易度の高い楽器ということができます。
- 簡単なところからスモールステップで学べるようにする
- 全員同じスピードで学習を進めない
- 合奏の時はそれぞれの生徒に合った楽器を割り当てる
無理なく学習ができるような工夫が必要ですね。
先生がヒステリック
「音楽の先生はヒステリックで嫌い」という意見も多く聞かれます。
音楽の先生にはヒステリックな性格の人が多いの?
音楽の先生がヒステリックと思われる原因の一つは、音楽の授業では「表現を教えるのにエネルギーが必要」だから、というのが一因かなと思います。
確かに歌に消極的な生徒に積極的に声量を出してもらうためには、教える側のエネルギーが結構いるよね。
「生徒に声を出させよう」「納得のいくような表現に仕上げよう」という気持ちになればなるほど、指導に熱が入ってヒステリックな先生と見られることはありがちです。
同じ内容を指導していたとしても、上手に生徒をほめながら穏やかに指導されている先生ももちろんいるわけなので、「指導中の表情」や「言葉の選び方」によって、あの先生はヒステリックだ、と思われてしまうので注意が必要ですね。
自分の思うような表現を生徒ができないからといって、厳しい言葉を投げつけるのはできるだけ控えましょう。
音楽の授業がつまらないと言われる理由
- 授業で取り上げられる曲がつまらない
- 何度も練習させられる
- 好きにやらせてもらえない
授業で取り上げられる曲がつまらない
音楽の教科書に載っている曲は、特に鑑賞曲の場合クラシックや伝統音楽・民族音楽など、古い時代のものが多く、生徒が普段好き好んで聴きそうな曲からはへだたりがあります。
私はクラシック音楽が大好きなので、なんとかその魅力を生徒たちにもわかってもらいたいのですが…
授業で教科書に載っている鑑賞曲を聴かせただけでその曲に対して「素晴らしい」と思ったり、興味を持ったり十分に理解するのは難しいでしょう。
- 曲の魅力はどんなところにあるのか能動的に見つけさせる
- 一節を楽器で演奏してみる
- 曲の構造や作られた背景など周辺知識を紹介する
このように工夫をして、鑑賞する曲に興味を持たせて生徒たちを引き込むことが大事です。
以下のツイートのような動画を作成しました。理解するのが難しい「運命」の動機が曲を通して構築されているということをアニメーションで示すものです。
曲の創作上の工夫であったり仕組みを探ったりする経験は日常生活ではなかなかしないでしょうから、それが理解できたとき「音楽ってこういうふうにできているのか」と生徒の知的好奇心が充足されて「おもしろいな」と感じられるのではないでしょうか。
↓「運命」の鑑賞授業教材をダウンロード!(他にもいろいろあります)
何度も練習させられる
- 同じことをずっと練習させられる
- できていることでもずっと練習させられる
こんな風な授業展開をされると生徒はつまらないと感じてしまいます 。
あまりにも難しい曲を提示してしまうと授業がつまらないどころか嫌いになってしまう危険性がありますが、自信を持たせようと思って提示した簡単すぎる課題を延々と練習させると食い足りないと感じてしまうのは大人も同じです。
また、まだまだ技術が習得できていないく練習が必要な課題であっても「ずっと同じ練習をさせられる」とつまらないと感じてしまいます。
同じ曲の練習であっても、
- 途中に全体練習や他のパートと合わせてみるような活動を取り入れる
- 他の活動もミックスして授業を構成する
このようにして生徒が活動に飽きないようにするのは効果的です。
個人での練習→全体練習→プロの演奏の鑑賞→個人での練習(2回目)、みたいに細かく区切って飽きないように工夫しましょう。
好きにやらせてもらえない
音楽は自由なものですが、音楽の授業となると、全員を平等に評価しなくてはなりません。そのため教える時にはある程度「このように歌ってみよう」とか「この音域で旋律を作ろう」など枠や型にはめて授業を進めることが多くなります。
そうしないと評価軸がぶれて評価がしづらくなるし…。
それによってもっと自由にやりたい音楽得意、好きな生徒が食い足りなくなってしまい「つまらない」と思ってしまうこともあります。
音楽の授業が難しい・つまらない・嫌いと言われないために
音楽の授業を「難しい」「つまらない」「嫌い」と言われないために、まずは生徒の授業に対する気持ちをよく読み取って授業する必要があります。
- 生徒の苦手意識や恥ずかしさを感じさせないように環境や設定を工夫する
- 課題設定が適度なものになるようにする
- 教員の思った通りな表現にならなくても厳しくしない
このような点に配慮して授業を工夫することで、生徒の気持ちも変わってくるでしょう。
↓逆の視点で「音楽の授業が楽しくなるコツ」という記事も書いているので是非参考にしてください
また、音楽の授業は生きていく上で必要なのか?という記事も書いているのでそちらも是非ご覧ください。
【音楽の授業いる?いらない?】名著から読み解く音楽教科の必要性
今回は以上です!
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