リトルネッロ形式と聞くと昔流行したビックリマンの「魔肖ネロ」を想起してしまうコギトです。
中学1年生の音楽の授業で鑑賞するヴィヴァルディ「春」第一楽章。
この曲は「リトルネッロ形式」で作られています。
今回の記事では
- 中学生にもわかるように
- 音楽の先生が中学生にわかりやすく教えられるように
リトルネッロ形式をヴィヴァルディの「春」第一楽章をもとに解説しています。
同じくリトルネッロ形式で作られた他の曲も紹介していますので最後までご覧ください。
コギト | 音楽教材研究家
- 音楽教員歴18年の元音楽教員。辞めても教材研究が好きで続ける
- 元作曲専攻で鑑賞や創作の授業が得意、ICT・時短マニア
- ピアノはコンクール全国大会入賞レベルでピアノ動画チャンネル(YouTube)も運営
- ICTを駆使・時短マニアnoteで自作教材をアップ、3000ダウンロードを突破!
- 音楽教員のためのオンラインサークル「ムジクラブ」運営中
リトルネッロ形式とはバロック時代の音楽形式
リトルネッロ「Ritornèllo」とはイタリア語で「繰り返し」を意味します。(なぜ繰り返しになるのかは後で解説します)
バロック時代に最もよく使われた音楽の形式で協奏曲の分野で多く採用されました。バロック時代の次の時代である古典派の時代のベートーヴェンまで続きました。
ベートーヴェンの協奏曲の第一楽章はソナタ形式といわれるけれど、実はリトルネッロ形式という見方もできるらしいですよ
リトルネッロ形式はサンドイッチのような形式
リトルネッロ形式は以下のような構造になっています。
リトルネッロ形式の構造は二つの部分から成り立っています。
- リトルネッロ部:全楽器の合奏で演奏される主題
- エピソード部:独奏楽器がメインで演奏される部分
この二つが繰り返しあらわれるのがリトルネッロ形式です
リトルネッロ形式の構造はサンドイッチに例えるとわかりやすいです。
リトルネッロ部は「パン」で、エピソード部は「具」です。
エピソード部(具)を挟む様に必ずリトルネッロ部があります。
曲の最初は必ずリトルネッロ部が演奏されます。
パンであるリトルネッロ部は何度も登場することになりますが、どれも似た様な旋律・曲想です。
それに比べて具であるエピソード部は毎回自由に変化し、サンドイッチ(曲)にさまざまな彩りを加えます。
パンー卵ーパンートマトーパンーきゅうりーパンーチーズーパン
みたいな構造です。理論的に表すと、
A-B-A-C-A-D-A-…
となりますね。
Aの部分が何度も繰り返されるのでリトルネッロ形式と名付けられたんですね。
ヴィヴァルディ「春」第一楽章でリトルネッロ形式を解説
ヴィヴァルディの「春」第一楽章を簡易楽譜にしてみました(採譜はブログオーナー)。
楽譜をみながら聴いてみてくださいね。
合奏であるリトルネッロ部が何度も現れ、その間に独奏中心のエピソード部が挟まれていることがよくわかりますね。
ヴィヴァルディ「春」以外のわかりやすいリトルネッロ形式の曲
ヴィヴァルディの「春」第一楽章以外でもわかりやすいリトルネッロ形式の曲を紹介します。
- 「秋」第1楽章
- 「秋」第3楽章
今までの解説でリトルネッロ形式が理解できたかどうか確かめるために、この曲を聴いてみて、リトルネッロ部では右手、エピソード部では左手を挙げてみましょう(授業風)。
以前バッハの「ヴァイオリン協奏曲第2番の第3楽章」をリトルネッロ形式としてこのブログで紹介していたところ、「この曲は主題が全て主調で現れしかも同じ形なので、リトルネッロ形式ではなくロンド形式です!」とご指摘いただきました💦ありがとうございます。
リトルネッロ形式とロンド形式の違い
ここからは少し専門的になりますが、リトルネッロ形式に似た形式で「ロンド形式」というものがあります。
リトルネッロ形式とロンド形式はどう違うの?
リトルネッロ形式とロンド形式の違いを以下の表にまとめました。
リトルネッロ形式 | ロンド形式 | |
---|---|---|
代表的な曲 | ヴィヴァルディ「春」第一楽章 | エリーゼのために |
構造 | A-B-A-C-A-D-A… | A-B-A-C-A(小ロンド) |
A部分の調 | 異なる | 同じ |
B・C・D…の挿入部 | 独奏楽器が主 | 独奏楽器が主というわけではない |
リトルネッロ形式ではA部分が何度も現れる際、調が変わることがありますが、ロンド形式では調は同じ。
また、B・C・Dの挿入部(エピソード部)では、リトルネッロ形式は独奏が中心で楽器編成が薄くなりますが、ロンド形式はその様な傾向はありません。
ここからわかるように、リトルネッロ形式とロンド形式は構造上似ていますが、調の設計や、曲中の楽器編成の点で異なる形式であることがわかります。
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リトルネッロ形式について理解できましたでしょうか?
ここまで理解できていたら、リトルネッロ形式は完璧です。音楽の授業で自信をもって教えることができますよ。
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ヴィヴァルディ「春」は曲自体は難しくないのですが、「リトルネッロ形式」「協奏曲」「バロック時代」「通奏低音」など、音楽用語がたくさん出てきて、説明がややこしくなりがち。この教材のスライドを使えば図解や音源が豊富なので、スイスイとスムーズに教えることができますよ。
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今回は以上です!
コメント
コメント一覧 (4件)
はじめまして、バッハ&バロック・ファンの一人です。
リトルネッロ形式についてわかりやすくまとめられていると思います。
しかし、バッハのヴァイオリン協奏曲第2番の第3楽章は、主題が5回ともすべて主調(ホ長調)で、しかも完全に同じ形で現れるので、リトルネッロ形式ではなく、ロンド形式です。日本語版 Wikipedia の解説は間違っています。
そうなんですね!ありがとうございます!
他のリトルネッロ形式のわかりやすい曲を中学生に示すならばどの曲をあげればわかりやすいでしょうか?
ヴィヴァルディ「秋」の第1楽章、第3楽章がわかりやすいでしょう。ヴィヴァルディの「調和の霊感」作品3の第3番ト長調、第8番イ短調も。バッハの作品にもたくさんありますが、他の形式と組み合わせたり、リトルネッロ主題が独奏部にも現れたりと、かなり複雑です。
そのように訂正したいと思います!教えてくださり感謝いたします。ありがとうございます!