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【わかりやすい!】シューベルト「魔王」の音楽の特徴を完全解説!

  • 魔王の曲を授業でちゃんと解説できるようになりたい!
  • 曲の魅力を音楽の面からわかるようになりたい!

こんな先生に向けたシューベルトの歌曲「魔王」の解説記事です。

コギト

もちろん一般の音楽好きな方にも楽しく読んでいただけます!

この記事の内容
  • 「魔王」はバラード?
  • シューベルト「魔王」の楽曲解説(登場人物の描き分け・転調の妙)
  • 他の作曲家が書いた「魔王」

こんな内容について解説しています。

譜例図解動画を交えながらかなりわかりやすく解説していきますのでどうぞご覧ください。

シューベルトの「魔王」は中学校の音楽の鑑賞授業でも取り上げられる定番曲。これからこの曲を授業で扱う中学校の先生がこの曲を十分に理解するうえでも最適な記事です。

是非最後までご覧ください!

IMSLPというサイトで、著作権フリーの楽譜を見ることができるので、曲を分析するのに便利です。今回の記事で仕様した楽譜もここから引用しています。

アプリもあります↓

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ブログ運営者

コギト | 音楽教材研究家

  • 音楽教員歴18年の元音楽教員辞めても教材研究が好きで続ける
  • 元作曲専攻で鑑賞創作の授業が得意、ICT・時短マニア
  • ピアノはコンクール全国大会入賞レベルでピアノ動画チャンネル(YouTube)も運営
  • ICTを駆使・時短マニアnote自作教材をアップ、3000ダウンロードを突破!
  • 音楽教員のためのオンラインサークル「ムジクラブ」運営中
目次

「魔王」はバラード?

「魔王」はバラードです。

生徒

え。バラードってゆっくりな曲のことじゃないの?

バラードとはもともと詩の形式の一つであり、「魔王の曲」がバラードなのではなく、「魔王の詩」がバラードなんです。

「魔王」の詩を作ったのはかの有名なゲーテ。

バラードの詩とは、最初(14〜15世紀)は韻を踏む形式の詩だったのが、18世紀にゲーテなどによって「物語形式ですすむ詩」をバラードと呼ぶようになりました。

魔王の詩は以下のようになっています。

<語り手>
夜の風をきり馬で駆け行くのは誰だ?
それは父親と子供
父親は子供を腕にかかえ
しっかりと抱いて温めている

父:息子よ、何を恐れて顔を隠す?
子:お父さんには魔王が見えないの?
王冠とシッポをもった魔王が
父:息子よ、あれはただの霧だよ

魔王:「可愛い坊や、私と一緒においで
楽しく遊ぼう
キレイな花も咲いて
黄金の衣装もたくさんある」

子:お父さん、お父さん!
魔王のささやきが聞こえないの?
父:落ち着くんだ坊や
枯葉が風で揺れているだけだよ

魔王:「素敵な少年よ、私と一緒においで
私の娘が君の面倒を見よう
歌や踊りも披露させよう」

子:お父さん、お父さん!
あれが見えないの?
暗がりにいる魔王の娘たちが!
父:息子よ、確かに見えるよ
あれは灰色の古い柳だ

魔王:「お前が大好きだ。可愛いその姿が。
いやがるのなら、力ずくで連れて行くぞ」
子:お父さん、お父さん!
魔王が僕をつかんでくるよ!
魔王が僕を苦しめる!

<語り手>
父親は恐ろしくなり 馬を急がせた
苦しむ息子を腕に抱いて
疲労困憊で辿り着いた時には
腕の中の息子は息絶えていた

「世界の民謡・童謡」より引用

  • 語り手
  • 魔王

これらの登場人物で話が進められる「物語形式の詩」です。だからバラードです。

シューベルトの魔王がゆっくりでもなければ美しい旋律ともちょっと違うのに「バラード」と呼ぶのは詩の形式という観点からそう呼んでいるのですね。

一般的な「バラード」の音楽のなりたち

音楽の意味で「バラード」を使い始めたのはピアノの詩人、ショパンです。ショパンに「バラード」というピアノ曲がありますが、もちろん詩はありません。

物語形式の詩が「バラード」と呼ばれるようになった。そこでショパンは「曲想がドラマティックで物語っぽい」自分の曲に「バラード」という名前をつけました。

そのショパンのバラードの中には必ず綺麗なメロディやゆっくりな曲調が現れます。
そこから今の意味、「ゆっくりなテンポ」「美しく感傷的な旋律」が特徴の曲をバラードというようになりました。

「魔王」がバラードだというのと、ポップスの「バラード調の曲」のバラードとは出所は一緒なのですが、意味しているものは全く別、ということになりますね。

シューベルト「魔王」の楽曲解説

ここからはシューベルト「魔王」の楽曲の解説をしていきます。

原調はト短調です。歌われる歌手の声域に合わせてヘ短調で歌われたもします(中学校の教科書だとホ短調で譜例が載っていますね)

↓曲を聴きたい場合は以下の動画をどうぞ。日本語訳を見ながら聴けます。

ピアノによる前奏と伴奏のピアノ

まず最初の前奏の部分。

「ドイツ歌曲集1/全音楽譜出版社」より引用。

ここは3連符の連打によって、馬が疾走する様子が描写されています。

そう、父が馬に乗って、苦しむ子を(家に?)連れて帰ろうとしている様子やそれを心配させる緊迫感が短調であることや、リズム・テンポで表されています。

この3連符をピアノで弾くのはかなり困難です。昔はピアノの鍵盤が軽かったので比較的弾くのが簡単だったようなのですが…。

また、シューベルトは3回にわたってこの伴奏を改作しており、第4稿まであります。比較用の動画を作成しました↓

この不吉な伴奏に乗って、まずは語り手が話し始めます。

語り手の歌の部分は原調のト短調を維持し、「時は○○時代、〜」と映画の最初のナレーションのようなイントロが表現されています。

各キャラクターの使い分け

基本的にはこの後は父・子・魔王の会話が中心となっていきます。

それぞれのキャラクターの使い分けにシューベルトの作曲上の工夫が見られますので見ていきましょう。

父の旋律の工夫

父はこの詩の中で子が死にそうで焦ってはいるものの、子をなだめて落ち着かせようとしています。

子が恐怖を口にしますが、「大丈夫だよ、枯葉が揺れているだけだよ」と言ったりするわけです。

この様子を表現するために

  • 長い音符をつかってゆっくりなメロディにする
  • 低い音を使う
長い音符(付点2分音符)を使ったり、低い音を使って包容力ある父親を表現しようとしています。「ドイツ歌曲集1/全音楽譜出版社」より引用。

このようなメロディ作りをすることで、父が子に安心を与えようとしている様子がわかります。

子の旋律の工夫

子は一貫して恐怖を口にします。

「お父さんお父さん」と呼びかける歌詞。3回同じフレーズがありますが、回を重ねるごとに転調して音が高くなっていきます。「ドイツ歌曲集1/全音楽譜出版社」より引用。

半音であがろうとして下がる旋律は不安定な力無さを表しているようで、半音の音程をぶつける(図の赤文字の部分)ことで、軋るような響きを作り、子の「悲鳴」のような表現を作ることができています。

後半の上行のフレーズ(図の青文字の部分)は震え上がる気持ちを抑えきれない感情の発露、という感じがします。

子のセリフは同じフレーズで3回表れますが、登場する度に転調してキーが上がっています。恐怖がより高まっていくのを音楽的にも上手に表現していますね。

魔王の旋律の工夫

魔王のセリフをシューベルトは変幻自在に表現しています。

魔王は悪役であり「怖い」ものの代表ですが、魔王のセリフには長調が採用されているのも特筆すべきです。「子を(あの世)へ誘い出す」ために、わざと怖さを隠し魔王も演技をしているわけですね。

最初のセリフは長調で柔らかく「おいで〜おいで〜」と優しく誘っています。長い音が多いのも特徴です。

魔王が子を誘う1回目の旋律(長調、長い音が多い)。「ドイツ歌曲集1/全音楽譜出版社」より引用。

2回目はあらゆる誘い文句を駆使して「これもあるよ、あれもあるよ」と口早にまくしたてます。メロディにも動きが多いですね。ここも長調です。

魔王が子を誘う2回目の旋律(1回目に同じく長調だが、8分音符など短い音符が多く、歌詞も早口になる)。「ドイツ歌曲集1/全音楽譜出版社」より引用。

3回目にして魔王は痺れを切らしはじめます。1・2回目のわかりやすい長調だったのが、不気味で不安定な調となり、魔王のセリフが終わる頃には短調に変化しています。

このように調の設定や、旋律のラインなどをうまく工夫して、一つ一つの状況を巧みに表現していることがよくわかります。

最後の部分

主調のト短調が帰ってきて、語り手の出番になります。曲冒頭の伴奏が再現されますが冒頭とは違い、伴奏が両手ともオクターブになっていて迫力が増します。「父は恐ろしくなり馬を急がせた」という詩を音で表現しています。

「ドイツ歌曲集1/全音楽譜出版社」より引用

今までずっと続いていた3連符がおわったことにより、馬が目的地についたことがわかります。

「ドイツ歌曲集1/全音楽譜出版社」より引用

「辿り着いた時には息子は息絶えていた」ということが無音で語り手のメロディで歌われ、最後はカデンツ(終止形)の二つの和音で物語の終わりを示し、曲を締めくくります。

シューベルト「魔王」は目くるめく転調に注目!

シューベルトは「転調の天才」です。

転調はある程度の準備をし、満を持して行われるものですが、シューベルトの場合は一瞬にして行われ、唐突な感じがありながらも絶妙です。

その転調の天才は「魔王」の曲でも数々の転調をし、曲をドラマティックなものにしています。

4分足らずの曲のなかで転調する回数なんと16回。普通のポップスの曲では一度も転調されない曲もあるくらいですから、ものすごい頻度ですよね。

ホ短調の曲に移調した場合の「魔王」の曲の調変遷。なんと1曲で16回も転調しています。

ただ転調を多用しているのではなく、それによって音楽的効果がバッチリ出ているのですからまさに「転調の天才」と言えます。

他の作曲家の書いた「魔王」

このゲーテの書いた「魔王」の詩には、別の作曲家も曲を書いています。

ライヒャルトの魔王

同じ旋律が繰り返されるし転調もないシンプルな構造の曲です。魔王のセリフ部分だけはメロディが一つの音から動かないところが不気味。

ベートーヴェンの魔王

伴奏が同じ音の連打なところはシューベルトに似ています(馬の蹄を表現?)。魔王のセリフが長調になるところも同じ。最後の子のセリフは息絶え絶えで、シューベルトの断末魔の叫びのようなメロディとは異なります。

[voice icon=”https://mujikurasu.com/wp-content/uploads/2020/08/0E33B023-B314-4C42-85E5-430035BAC40B-e1597742294818.png” name=”コギト先生” type=”l”]他の作曲家の「魔王」と比べてもシューベルトの魔王、ドラマチックですよね。 [/voice]

他の曲もなかなかのものですが、イントロ部分から聴く人の心グッとつかみ、詩の内容を細部にわたって表現し、ドラマティックに構成しているシューベルトの魔王が圧倒的と感じます。

↓「魔王」だけを集めたこんなCDもありました。比較して聴いてみたいですね。

「魔王」はシューベルトの歌曲の超名曲!(おすすめ動画)

今回はシューベルトの「魔王」の曲を解説しました。

状況の表現をしたり、劇的な効果を高めたりするためにシューベルトがいろいろな音楽上の工夫をしていることがわかります。

今回の記事の内容を理解した上でもう一度この曲を聞いてみてください。

↓おすすめなのはフィッシャーディースカウの演奏です。

コギト

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今回は以上です!

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この記事を書いた人

音楽教師歴18年の元教員。鑑賞・創作・器楽合奏授業が得意。伴奏アレンジや合唱、合奏編曲もできます。国立大学の附属学校で研究主任&教育実習など経験あり。大好きな教材づくりで全国の音楽の先生の役に立ちたい。 自分の仕事を全部音楽関係にしたいから教員をやめて独立。ピアノ歴20年以上。アマチュアコンクールで全国入賞経験あり。ピアノアレンジ楽譜も作っています。

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