「音が鳴らない曲がある」んだけど、知ってる?
えっ、そんな曲あるわけないでしょ?
っていうか、それって音楽じゃないじゃん!
コギト | 音楽教材研究家
- 音楽教員歴18年の元音楽教員。辞めても教材研究が好きで続ける
- 元作曲専攻で鑑賞や創作の授業が得意、ICT・時短マニア
- ピアノはコンクール全国大会入賞レベルでピアノ動画チャンネル(YouTube)も運営
- ICTを駆使・時短マニアnoteで自作教材をアップ、3000ダウンロードを突破!
- 音楽教員のためのオンラインサークル「ムジクラブ」運営中
ジョン・ケージの「4分33秒」
アメリカの作曲家ジョン・ケージは「4分33秒」という特別な曲を書きました。
驚くことに、この曲には楽器の音が一切含まれていないんです!
この曲は、1952年アメリカのニューヨークでピアニストのデヴィッド・チューダーによって初めて演奏されました(演奏された、というのか…?)
4分33秒はどうやって演奏される?
この曲は何も演奏しないのですが、ちゃんと楽譜があります(なんと販売もされています)。
楽譜に書かれているのはこれだけ。
第1楽章・休み
第2楽章・休み
第3楽章・休み
全体の長さが4分33秒であれば各楽章の長さは自由だそうです
詐欺でしょ、詐欺!笑
上の動画の演奏では、いかにもこれから演奏するような素振りで聴衆の注目を集めておいて、演奏が始まるとピアノの蓋を閉じます。第1楽章が終了すると蓋を開ける、という感じです。
何を聴かせられてるんだ、俺達は…
4分33秒のさまざまな演奏
この曲はピアノだけでなくどんな楽器で演奏されてもいいことになっています。
この曲のアイデアの面白さから、いろんなバージョンが生まれています。
↓ヴァイオリンコンチェルト版
↓ヘヴィメタル版
なんで4分33秒?この音楽の意味は?
なぜ5分でも10分でもなく、4分33秒なの?
諸説あるんです
一説には4分33秒は「絶対零度の音楽」、と言われています。
4分33秒=273秒。
273という数字で思い出すのは温度で、-273℃というのは「絶対零度」と言われています。
これ以上はどんなものの温度も低くすることはできない、温度の最低の数字なんです。
(温度の)エネルギーがゼロで何もない音楽。
こんなイメージの数字として4分33秒を選んだ、というわけです。
そもそもこんな曲を作ったり演奏する意味ってあるの?
演奏もしないし、何も聴こえない。こんな曲に意味があるのか?と思ってしまいますよね。
ただ、この4分33秒という曲は演奏はしないのですが、何も聴こえないということはないんです。
実験してみましょう。
クラスのみんなで30秒間、完全に静かにしてみましょう。耳を澄まして、何も聴こえないか、何が聴こえるか感じてみましょう。
(30秒後)
教室の外で車が走る音がした!
誰かの呼吸の音も聞こえたよ!
そうです。静かな中でも音っていろんなところから聴こえてきます。
そういった音は「取るに足らない、意味のない音」なのでしょうか?音楽のような美しさは全くないのでしょうか?
ケージが伝えたかったのはこんなことです。
- 無音と言われる中にも実際には音がある
- ねらって出したわけではない偶然の音も音楽と言ってもいい
音楽って楽器の音が鳴ってるものでしょう?
と不思議に思うかもしれません。
しかし、ケージがこの曲で伝えたかったのは、演奏者が静かにしている間に聞こえる「周りの音」も音楽の一部であるということです。
風の音や、教室の外で歩いている人の足音、ふとした瞬間に誰かが動く音。
楽器の音じゃなくてもおもしろい音とか魅力的な音ってあるよね!
そのような普段は聴き過ごされている音が「4分33秒」の音楽になるんです。
4分33秒は、「人が作ったものではない偶然の音を音楽のように聴くための曲」、といっていいかもしれませんね。
今日の帰り道、どんな音が自分の耳に聴こえてくるか、それを音楽だと思って聴いてみてください。結構面白いですよ。
今回は以上です!
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